塾に入ったばかりのころは勉強の難易度がまだ低いため、親が子どもに教えることも充分可能です。しかし、中学受験に合格させようと思ったら、少しずつ親が手を放していくことが大切。特に親が勉強を教えるのをやめるようシフトしていく必要があります。なぜ、ご両親がお子さんに勉強を教えてはいけないのでしょうか。また、勉強を教えないのであれば、ご両親はなにをすればいいのでしょうか。
親が子どもに勉強を教えるのをやめるべき理由
4年生のころまで、親が子どもに勉強を教えることにはメリットがあります。子どもがつまずいているときはすぐに助けることができますし、その分だけ早く勉強が進むはずです。ところが5年生になるころには、これが少しずつうまくいかなくなってきます。それはなぜでしょうか。
単純に勉強の難易度が上がる
5年生になると勉強のレベルが一段上がります。一般的な家庭の場合、算数や理科はもはや親の手には負えず、国語も記述や選択問題はかなりの難易度。教えられるのは、ことわざや慣用句などの言葉の知識分野と漢字だけという状況になります。社会では地理や歴史を因果関係まで踏まえたうえで説明しなければいけません。もちろん、ご両親が得意とする科目によって異なりますが、どの家庭でもおおよそ同じようなことが起こるものです。
お子さんに勉強を教えるためには、まずはご両親自身が勉強の内容を理解しなければなりません。仕事や家事で忙しく過ごしている親には、かなり高いハードルなのではないでしょうか。
子どもが混乱する
塾の講師はさまざまな経験から効果的な指導法を身につけています。常に「この問題を子どもに理解させるにはどう教えたらいいか?」と考えているのです。
塾講師のこうした指導を受けたお子さんが、ご両親から塾とは異なる方法を教わったとしたらどうなるのでしょうか。勉強ができる子であれば、「塾の先生はこうやって解けって言って、お母さんはこうやって解けって言ったな。一つの問題でも解き方はいくつかあるんだな。なるほど」と理解することができるかもしれません。しかし、勉強の苦手な子は、同じ問題なのにもかかわらず別の問題を教わったように感じ混乱してしまいます。教わったことが頭のなかで結びつかないため、勉強しても学力が伸びていかないという結果になってしまうのです。
ちなみに、算数の苦手な子どもを見かねた親が方程式を教えてしまうケースがときどきありますが、これは絶対にいけません。塾で方程式を使って解くことは絶対にありませんから、子どもは完全にパニックに陥ってしまいます。
子どもが反発する
5年生と言えば、早ければ反抗期がはじまる時期。まだまだ親に甘えたい子どもが多数いる一方で、親が必要以上に自分に関わることを嫌う子が出てきます。お子さんにしてみれば、勉強についてはできるだけ口を出してほしくないもの。お子さんが一所懸命考えているときに、ご両親が「そうじゃないの! なんでそうなるのよ!」と責めるようなことを言ってしまえば、「うるさい! ちょっと黙ってよ!」と反発されてしまいます。これではお子さんが勉強に取り組むどころではなくなってしまいますね。
勉強を教えるのをやめた親はなにをすべきか?
勉強を教えないのであれば、ご両親はどのように中学受験生と関わっていけばいいのでしょうか。
スケジュールの管理
もっともお願いしたいのは、スケジュールの管理です。相当しっかりしたお子さんでない限り、小学生が自分でスケジュールを管理することはできません。学校の予定や通塾日を考慮したうえで、「何曜日のいつ、どの教科を勉強するのか」を管理してください。できれば同じペースでできるよう、週単位で固定できるといいですね。
ポイントは、土日のどちらかを空けておくこと。学習スケジュールはさまざまな事情で遅れがちになります。予定通り終わらなかった場合は、土日のどちらかを利用して調整しましょう。
お子さんが勉強をやっているかどうかのチェック
勉強を教えるのをやめたからといって、すべてをお子さんに任せてしまうのではいけません。「今日はこれをやるんだよ」と終わらせる勉強を毎日示し、1日の終わりには必ず「しっかりできたか」をチェックする習慣をつけてください。このルーティーンを怠ると「実はしっかり宿題をやっていなかった」というようなことが1か月経ってから判明し、気付いたときには成績が急下降していたということにもなりかねません。

「勉強のチェック」とは言っても、必ずしも厳しい雰囲気で行う必要はありません。特に学年が低いうちは「じゃあ、しっかりできたか一緒に確認してみようか」などと声をかけ、できていることは大げさなぐらい褒めてあげましょう。逆にできていないことについては、なぜできなかったのか一緒に振り返り、どうすればできるか改善策を考えるといいですね。どうすればいいかわからない場合は、塾に相談してみましょう。
雑務
塾によってはプリントのコピーなどの作業が必要になります。こうした雑務はご両親が担当し、お子さんには勉強に専念してもらいましょう。ただ、筆者個人としては、なにからなにまでご両親がやる必要はないと思います。塾のカバンの準備などは、本人にやらせてもいいのではないでしょうか。
健康の管理
体調を崩すと学習スケジュール全体に影響が出ます。子どもは体調を崩すのが当たり前なので「受験勉強をしている3年間、風邪一つ引かない」というのは難しいもの。ただ、体調を崩すリスクを軽減することならできます。可能な限り注意してあげてください。
特に入試直前のインフルエンザは、3年間の努力と苦労を水の泡にしてしまいかねません。「1月は何日ごろまで学校に行かせるのか」という点も含めて、体調管理に気を配るといいですね。
中学受験生の親に求められること
中学受験生の親は“マネージャー”だと考えるといいでしょう。「どうすれば子どもが気持ちよく勉強できるのか」を考えて、時には支えて時には導くイメージです。もちろん、子どもには個性がありますから、一概に「こうすれば子どもいきいきと勉強してくれる」という方法はありません。ぜひ子どもにあった言葉や声かけの方法を見つけ、勉強と向き合う環境を整えてあげてください。
まとめ
今回の記事をまとめます。
親が子どもに勉強を教えるのをやめるべき理由
- 単純に勉強の難易度が上がる
- 子どもが混乱する
- 子どもが反発する
勉強を教えるのをやめた親はなにをすべきか?
- スケジュールの管理
- 雑務
- 健康の管理
中学受験の勉強を親が教えるのは難しいもの。親はマネージャーとしての役割に徹することが大切です。