5年生後期を一言で表すと「6年生への橋渡しの時期」です。どちらかというとまだ4年生に近かった5年生前期までに学習したことをベースに、6年生に向けて必要なことを学習していきます。
サピックスの国語も学習の内容が大きく進むのが特徴です。国語Bでは受験生本人とはおかれた境遇や立場、年齢層が異なる人物が主人公の文学的文章(物語文)や、社会問題を扱った説明的文章を読み、考えることになります。いっぽうの国語Aでは前期のあいだに取り組んできた「読解メソッド」がなくなり、「解法メソッド」へとステップアップします。
それでは5年生後期、サピックスに通う受験生やご家庭はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
5年生後期の国語|学習時に意識したいポイント
サピックスに通う5年生が意識したいこと、注意したことを国語Bと国語Aに分けて紹介します。(5年生前期以前の時点でこの記事を読むことも考慮して、具体的な作品名・文章のタイトルについてはあえて書いていません)
国語Bでは人間に典型的な心理や社会で起きている問題を学習する
国語Bは長文を読んで、主に記述問題に取り組む授業です。この点は4年生以降、基本的に変わりません。ただ、その内容が5年生前期までとは変わります。
5年生前期までは、受験生がイメージしやすい文章が大半でした。
文学的文章であれば、受験生本人と比較的近い立場の人物が主人公、舞台は現代といった感じですね。幕末が舞台の文章が出ることもありますが、主人公の年齢は現代でいうところの小学生ぐらいの設定です。そのため、授業の担当講師の方針やコース全体の学力によっても変わりますが、主人公側の視点で解答する問題に取り組むことが多くありました。
説明的文章であれば、身近にいる昆虫や動物が題材の文章が多く取り上げられます。文章中に使われている言葉や表現も平易でわかりやすいのが特徴です。
5年生後期になると、受験生がイメージしづらい文章が多く取り上げられます。
文学的文章であれば、障害や難病を抱えている子や奉公(丁稚)に出されている子、難民の子など、受験生とは異なる立場・境遇にいる子が主人公になり、時代も戦時中であることもあります。また、問題も主人公の視点でとらえるものばかりでなく、父親や母親、友人、友人の親など主人公の周りにいる人物の気持ちを考えるものが出題されるようになります。
説明的文章で扱われるのは、「日本語」や「個性」といった抽象的な内容や社会で起きている問題について論じられた内容です。文章自体から内容を読み取って考えるだけでなく、社会科や理科で学習した知識、さらに言えば生活のなかで自然と覚えた知識まで使って有機的に理解していくことが求められるようになっていきます。
こうしたなかで、受験生は「親というのはたいてい、子どもに愛情を持っているものなのだな。子どもの幸せを願っているものなのだな」「戦時中にはこういう考え方をしたんだな」「障害を抱えている子は同情されることを嫌うのだな。でも、それって障害のない自分も一緒だよな」などと学んでいきます。
こうしたこと学習の積み重ねが6年生で必要になる学力のベースになるのです。
私は国語を”全方位的な科目”と呼ぶことがあります。国語では読解力や言葉の知識、漢字を学習するだけのものではありません。算数、理科、社会といった主要科目はもちろんのこと、音楽、図工(美術)、体育、それ以外にも日常で関わるさまざまな知識を結び付けられることが求められているのですね。
国語Aでは実践的な問題の解き方(解法)を学習する
国語のA授業では漢字の学習や言葉の知識の学習を継続します。「コトノハ」の学習が疎かになりがちですが、マンスリーテストやサピックスオープンに出ることもありますので、しっかり復習しておくといいですね。ここまでは5年生前期までと大きく変わりません。
大きく変わるのは、「読解メソッド」が「解法メソッド」になることです。「読解メソッド」では、主に文章の読み方を学習しました。「どういうところに注目して文章を読むのか」を中心に学習するものですね。
5年生後期になると「解法メソッド」にステップアップして、どのように問題を解くのかを学んでいきます。「設問のどこに注目するのか」「傍線部のどこに注目するのか」「空欄補充問題はどうやって解くのか」「対比はどう利用するのか」など、問題を解くためのテクニカルな内容を学習していくのです。
A授業の復習はB授業と比較するとどうしても手薄になりがちなのですが、選択問題や抜き出し問題といった客観問題を解くのに大切なことを一つひとつ学習できるものになっています。
5年生後期、ご両親に取り組んでほしいこと
5年生後期、特に国語Bについてぜひご両親に取り組んでほしいことがあります。それは毎回のテキストについて、親子で話し合うことです。
たとえば、食事のときに「今日の(昨日の)国語Bはどういう内容だったの?」「どういうことを教わったの?」というように聞いてみてください。こうすることで、授業で学習してきた内容がお子さんのなかに入っていきます。
また、お子さんの話す授業の内容に対して、「なるほど、そういうことを教わったんだね。そのいっぽうでお母さんは(お父さんは)こういうふうにも思うんだよね」といったようにテキストにはなかった視点を提示したり、補足したりするとさらにいいですね。こうしたことの繰り返しで、お子さんのなかに多面的・多角的な視点が育ちます。
これはごくごく当たり前のことではあるですが、5年生11歳のお子さんは自分を中心に物事を見ますし、考えます。一方で中学受験の国語で求められるのは、自分とは異なる視点で世界を捉える力です。この力を5年生のうちにから少しずつ育みたいのですね(もちろんこの力は中学受験だけでなく、その後の人生を生きるうえでも大切なものだと考えます)。
テキストの内容についてお子さんと話合うためには、ご両親もテキストを読む必要があります。毎週のテキストを読むのは大変なことだとは思いますが、大人であれば10分~15分程度で読めるものばかりです。ここで紹介したことに、ぜひ取り組んでいただければと思います。
まとめ
- 国語Bでは人間に典型的な心理や社会で起きている問題を学習する
- 国語Aでは実践的な問題の解き方(解法)を学習する
- 特に国語Aの内容について親子で話し合う時間をつくる
サピックスの5年生後期は、6年生に向けて本格的に土台をつくっていく時期です。この期間の過ごし方が、6年生になってからの学力の伸び方や1年半後の入試の結果に大きく影響してくることもあります。ぜひ充実した5年生後期を過ごしてください。