「子どもの学力は母親の学歴に比例する」
これらはいずれも国が発表したデータです。
こうしたデータを見ると「うちには中学受験は無理かもしれない」、「親の職業や年収、学歴が子どもの合否に影響するのでは?」と考えてしまうかもしれません。
では、中学受験生のご両親はどんな学歴でどんな職業に就いており、どれぐらいの年収があるのでしょうか。また、こうしたものがお子さんの合否に影響することはあるのでしょうか。
中学受験生の親の職業は?
中学受験生のご両親はどんな職業に就いているのでしょうか。ひと昔前とは異なり、入塾時の資料にご両親の職業を記入する欄はないことがほとんどです。しかし、現場で仕事をしていると、どうしても耳に入ってきてしまうことがあります。個人・ご家庭の情報であるため詳しく書くことはできませんが、これまで以下のような職業を聞いたことがあります。
- 経営者
- 地主
- 投資家
- 医師
- 弁護士
- 銀行員
- 商社
- テレビ局
- 出版社
- 政治家
一般的に「高収入」というイメージがある職業ばかりだと思います。では、中学受験生のご両親は実際どれぐらいの収入があるのでしょうか。
中学受験生の親の年収は?
一般的に中学受験塾にかかる費用は小学4~6年生までの3年間で200~250万円といわれています。その後の私立中学にかかる費用は250~300万円ほど。仮に高校も同じだけかかるとすると、中学1年生~高校3年生までの6年間で500~600万円となります。つまり、中学受験をすると、小学4年生~高校3年生までの9年間で700~900万円ほどかかるのです。
単純計算して毎年約100万円、毎月約8万円の出費は、どうしても家計を圧迫します。また、お子さんが小学4年生~高校3年生というタイミングは、住宅ローンの返済などが続いている時期。「こんなにお金がかかるなんて、中学受験をするほかの家はどれだけ収入があるの!?」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
実は、私立中学に通うお子さんがいる家庭の世帯年収を調査したデータがあります。以下がその結果です。
- 400万円未満…4.2%
- 400万円~599万円…9.2%
- 600万円~799万円…16.3%
- 800万円~999万円…18.4%
- 1000万円~1999万円…17.3%
- 1200万円以上…34.6%
(平成28年度子供の学習費調査/文部科学省)
子供の学習費調査は隔年で実施されているものなので、この記事の執筆時点では平成28年度版が最新です。
もっとも多いのは、年収1200万円以上の家庭。800万円以上、1000万円以上がそれに続きます。この3つの年収帯を合計すると70.3%。つまり、中学受験生のご家庭は10世帯に7世帯が年収800万円以上あるわけです。一方、国税庁が発表したサラリーマンの平均年収は男性が531.5万円、女性が287万円。これを合計して平均的な共働き世帯年収を計算すると818.5万円となります。中学受験生のご家庭がいかに高い世帯年収を得ているかがわかるのではないでしょうか。
中学受験生の親の学歴は?
高い世帯年収のある中学受験生の家庭。いったいどのような学歴の家が多いのでしょうか。2018年夏、文部科学省が衝撃的なデータを発表しました。その内容は「子どもの学力は母親の学歴と比例する」というもの。簡単に言えば、「偏差値の高い母親がサポートする子の偏差値はやはり高い」ということです。
一般的に、塾が入塾時に記入をお願いしている資料にご両親の学歴を書く欄はないので、ご両親の学歴を知ることはできません。ただ、こうしたデータを見る限り、中学受験生のご両親は高い学歴を持っているのではないかと推察できます。
親の職業や年収、学歴は合否に影響する?
ご両親の職業や年収、学歴は合否に影響があるのでしょうか。結論から書けば、「基本的にない」と考えて差し支えないでしょう。現在、ほとんどの中学校がご両親の年収や職業、学歴を願書に記入することを求めていません。職業については、面接で聞かれることがありますが、中学校側が不安を感じるような職業でない限り影響はないと考えられます。
中学校が入学してほしいのは、学力優秀で優れた人間性を持つ生徒。特に男子校では面接がないことが多いことを考えると、純粋に学力で合否が決められると考えていいでしょう。
ただし、別の見方をすると、ご両親の学歴が合否に影響する可能性もあると言うこともできます。「中学受験は親子の受験」です。そうだとは言え、実際に中学受験生のサポートをしているのは、ほとんどの場合「ご両親」ではなく「お母様」です(その是非についてはここでは問いません)。そう考えると、学生時代に受験勉強のノウハウを身に着けてきたお母様がサポートすれば、その分だけ受験生本人の学力を向上させられる可能性があります。文科省が発表した「子どもの学力は母親の学歴と比例する」というデータは、こうしたことを表しているのでしょう(もちろん、お母様自身が高い学力を持っていることで、逆にお子さんがどうしてできないのかわからず困るケースもあるのですが……)。こうした観点では、親御さんの学歴が合否に影響すると考えることもできます。
年収や学歴が低いと中学受験をさせてはいけないの?
ここまでに紹介したデータを見て、「うちは年収や学歴が低いから中学受験なんてとてもとても……」と考えてしまう方がいらっしゃるかもしれません。もちろん、小学4年生から高校3年生までの学費を考えれば、ご両親の年収は高いほうが安心できます。また、ご両親の学歴が高い、つまり学力が高いほうが勉強面でも充実したサポートができるでしょう。しかし、年収や学歴が低いから中学受験できないというのは誤りです。
経済面について言えば、大手塾にも私立中学にも特待生制度があります。一定水準以上の学力を保ってこうした制度を利用できれば、負担は大きく軽減されるはずです。また、お子さんが小さいうちに学費の積み立てをおこなっておけば、受験期以降の負担を軽くすることができます。また、国立の中学校や中高一貫の公立、さらには大学も国公立に進学すれば、長期的なコストはかなり抑えられるでしょう。
学習面で言えば、ご両親の役割は中学受験生のサポートです。受験生が肉体的にも精神的にも健康でいてくれれば、勉強は塾や家庭教師が教えます。そう考えれば、必ずしもご両親が高学歴である必要はないのです。
まとめ
一般的に中学受験生のご両親は「高年収」「高学歴」であることがわかりました。しかし、これらが合否に影響することはありません。「君のお父さんは○○社にお勤めだから合格させてあげよう」や「君の世帯は年収1000万円に達しないから不合格」「あなたのお母さんは学歴が低いから本校には入れません」というようなことは起きないのです。中学受験生を持つご両親にとっては衝撃的なデータが出ていますが、あまり気にせず受験勉強に集中するのがベストな選択だと言えます。