サピックスの組分けテストは「難しい!」「できない!」とよくいわれます。
実際、2023年3月に実施された新6年生入室・組分けテストの国語は“難しい”問題が並んでおり、平均点は150点満点で67.5点。筆者の元にも「難しかった」という声が多く届きました。筆者としては、「あなたたちは、もう5年生(新6年生)ではないよ。6年生、つまり受験生なんだよ」というメッセージだと捉えています。
その一方で、組分けテストはコース昇降に制限がありません。理論上はたった1回の組分けテストでα1にもAにもコースが変わる可能性があります。
また、組分けテストは春期講習や夏期講習の前におこなわれることが多いため、悪い結果になると大切な講習を不本意なコースで受講することになりかねません。ですから、しっかりした対策を立てて臨みたいという気持ちは非常によくわかります。
それではサピックスの組分けテストで点を取るためには、どのような対策を立てていけばよいのでしょうか。今回は主に6年生の組分けテストを例に、対策方法を説明したいと思います。
組分けテストとは|1月、3月、7月に実際される実力テスト
サピックスの組分けテストは、新学年に上がる直前の1月、春期講習前の3月、夏期講習前の7月に実施される実力テストです。2~3コースしか昇降のないマンスリーテストとは異なり、純粋に偏差値順に所属コースが決まります。また、テストの出題範囲はありません。
組分けテスト |
マンスリーテスト |
|
実施月 |
1、3、7月 |
4、5、6、8、9、10、11、12月 |
昇降 |
無制限 |
数コース |
テスト範囲 |
なし |
あり |
国語の組分けテストの構成
ここからは、国語の組分けテストについて説明していきます
国語の組分けテストは、毎回、ほぼ同じような構成となっています。
- 大問1:漢字(20点)
- 大問2:知識分野(20点)
- 大問3:説明的文章(55点前後)
- 大問4:文学的文章(55点前後)
※稀に説明的文章と文学的文章の順番が入れ替わることがあります。
得点の配分はマンスリーテストや復習テストと基本的に同じです。25%程度が漢字・知識分野。75%程度が読解問題という配分になっています。
「組分けテストは対策の方法がない」は本当だろうか?
「組分けテストには範囲がないから勉強の方法がない」といわれることがあります。5年生の復習テストのように授業で取り組んだのと同じ文章が出るわけではなく、まったく初見の文章が出題されるからです。
組分けテストに対策法がないというのは本当でしょうか。この記事の冒頭に書いた、2023年3月実施の新6年生入室・組分けテストを例に考えてみましょう。
このテストの平均点は非常に低く「67.5点」でした。多くの受験生が「難しかった」と感じたはずです。
しかし、各問題を見てみると、実は3月までに教わってきた解法がそのまま使えたことがわかります。具体的にどのような解法が使えたのか、このテストから3問をピックアップして確認してみましょう。ここを確認すれば組分けテストの対策法が見えてくるはずです。
(この記事ではテストの問題をそのままではなく、類題を作成し説明します)
傍線部を含む一文に注目して、指示語の内容を確認する
まずは、こちらの問題を見てください。(※傍線ではなく色をつけます)
彼はこの1年間リーダーとしてチームを牽引してきた。彼がリーダーになってから、チームは県大会で悲願の初優勝を果たすだけでなく、地元の人々からも愛されるようになった。彼が監督やチームのメンバーから頼りにされるのは、その功績から考えれば不思議なことではないだろう。
【問題】
傍線部に「彼が監督やチームのメンバーから頼りにされる」とありますが、なぜ「監督やチームのメンバー」は「彼」を「頼りにする」のですか。その理由としてもっともふさわしいものを記号で答えなさい。
この問題を解くには、まず傍線部を含む一文を読みます。
これが傍線部を含む一文ですね。この一文には「この功績から考えれば不思議なことではない」という指示語を含む語句があるのがわかります。ですから、「その功績」の内容を確認すれば、「彼」が「頼りにされる」理由がわかはずです。
「この功績」は「彼がリーダーになってから、チームは県大会で悲願の初優勝を果たすだけでなく、地元の人々からも愛されるようになった」になります。したがって、この内容が入っている選択肢が答えということになります。
傍線部の主語を明らかにして答えを出す問題
次は、こちらの問題をご覧ください。
このイベントの実行委員になったのは、自分の意志ではなかった。担任の鈴木先生にどうしてもとお願いされたのだ。一方の木下さんも、どうやら自分の意志で実行委員になったわけではないらしい。クラスメイトたちからの強い推薦があったという。誰かが喜ぶのならできるだけ役に立ちたいと考えてしまうのは、僕たちの長所なのだろうか、短所なのだろうか。
【問題】
傍線部に「僕たちの長所なのだろか、短所なのだろうか」とありますが、「僕」はなぜこのように思っているのですか。その理由としてもっともふさわしいものを記号で答えなさい。
この問題で指定された傍線部「僕たちの長所なのだろうか、短所なのだろうか」を見ると、主語がないことがわかります。ですから、まずは主語を確認する必要があります。
主語は「誰かが喜ぶのならできるだけ役に立ちたいと考えてしまうのは」になります。ここまで確認したら、「誰かの役に立ちたいと考えてしまう」ことが長所になる場合と短所になる場合を、本文を元に考えてあげればよいということになります。
傍線部や傍線部を含む一文の接続語・接続表現に注目する
最後にこの問題をご覧ください。
どんなに無駄のように思える知識であっても、思わぬところで自分の身を助けることがあるので、無意味なものといういうレッテルを貼って一蹴してはならない。
【問題】
傍線部「無意味なものといういうレッテルを貼って一蹴してはならない」のはなぜですか。その理由としてもっともふさわしいものを記号で答えなさい。
この問題では、傍線部「無意味なものといういうレッテルを貼って一蹴してはならない」の前に「ので」という理由を表す言葉があります。ですから、「ので」の前を見れば理由がわかることになります。
ちなみに、ここまで説明した3つの解法で解ける問題だけで、30点程度の配点がありました。
組分けテストの対策法
2023年3月実施の6年生入室・組分けテストの類題と、その解法を紹介しました。繰り返すことになり恐縮ですが、これらの解法は3月までの授業で教わっています。
どの内容かというと、いずれもA授業で5年生後期からはじまる「解法メソッド」の「今日のコレいち問」です。
この記事を読んでくださっている方のなかには、これから上記の内容を教わる方もいらっしゃると思いますので具体的なテキストナンバーについては控えますが、6年生3月までに間違いなく教わっています。
組分けテストの対策法がわかってきました。
サピックスのテキストの内容を、組分けテストの前に、徹底的に復習する。このひと言に尽きます。
- 「今日のコレいち問」の内容は身についていますか? 「今日のコレいち問」は5年生後期~6年生前期のAテキストに掲載されています。
- 「コトノハ」や「コトノハ実践編」に掲載されている語句は身についていますか?
- デイリーチェックで出題される「言葉ナビ」の内容はしっかり身についていますか?
漢字や知識分野についての学習法については、下記の記事で詳しく説明しています。
記事の公開から1年弱経ちますが、お問い合わせをいただくメールやお電話で「漢字の勉強が効率的になり、いままでより時間をかけていないのにデイリーチェックで点を取れるようになった」との感想をいただくことが増えています。本当にうれしく思います。
日ごろの内容を取りこぼさず学習するのが一番大切
サピックスのテキストの内容を完璧にすればいいのはわかったけれど、組分けテストの前に総復習する時間はないよ……。
こんな声が聞こえてきそうですね。この声の通りで、毎回の授業を受けながら、組分けテストの直前に総復習する時間を取れないというのが実際のところです。
そうであれば、毎回の授業の内容をしっかり身につけていくこと。これがもっとも効率的かつ効果的です。これを意識すれば、組分けテスト直前の負担は大幅に軽減されます。
- 毎回の授業の先にマンスリーテストがある。
- マンスリーテストの先に組分けテストがある。
- 組分けテストの先に入試がある。
こんなイメージを持って、毎回の授業の内容に取り組んでいただければと思います。
少しでも組分けテストでいい結果を残すために対策したい場合は、「今日のコレいち問」「コトノハ」「言葉ナビ」、これまでの「デイリーチェックテスト」の内容をしっかり復習しておきましょう。
まとめ
- 組分けテストには範囲はありませんが、テストまでの授業の内容が詰まった問題が出題される。
- 少しでも対策したい場合は、「今日のコレいち問」「コトノハ」「言葉ナビ」、これまでの「デイリーチェックテスト」の内容を復習する。
- 毎回の授業内容をしっかり身につけていくことが、もっともよい対策になる。
組分けテストは1年に3回しかないうえにテスト範囲がありません。また、コース昇降は無制限で実施されます。理想を言えば、記事の最後に書いたように、毎回の授業内容をしっかり身につけていくのがもっともいい方法です。
ただ、実際には身につけたい内容を取りこぼしてしまうことはあります。もしそうなのであれば、「今日のコレいち問」の内容を中心に、漢字や知識分野についても可能な限り復習してみましょう。
今回の内容がサピックスに通う中学受験生や保護者の皆様のお役に立つことを願っています。