「選択肢の問題は苦手」という受験生は意外とたくさんいます。その一方で塾の定期テストや模試では(志望校別模試でない限り)必ず選択問題が出題されるものです。入試本番でもほぼすべての中学校で選択問題が出されます。学校によっては配点のほとんどが選択問題ということもあるのです。
選択問題は偏差値やコース(クラス)を上げるだけでなく、合否を分けるうえで非常に大切なもの。苦手のままにしておくわけにはいきません。どうすれば選択問題を解けるようになるのでしょうか。
このページでは選択問題を解くための基本中の基本を紹介します。「基本」とは言っていますが、この手順を身につければ相当の難問でない限り解けるはずです。
選択問題の解き方 基本中の基本
1、設問をよく読み、なにが問われているのかを確認する
2、どう考えれば答えにたどり着けそうかを考える
3、本文の傍線部分(――部)を確認するとともに、関係する部分からヒントがないか確認する
4、どんな内容が答えになりそうか見当をつける
5、選択肢から答えだと思われるものを見つける
6、選択肢を細かく検証する
大切なことは、選択肢を見るのは最後だということ。
選択肢問題を解くのが苦手な受験生を見ていると、設問を見てすぐに選択肢を読んでいることがあります。それでも一度本文に戻ってヒントを探すなどできればいいのですが、本当に選択肢だけを読んで解答する受験生も少なくありません。
選択肢を読むのは最後。その前にやることがあるということを覚えておきましょう。
実際に問題を解いていると、先に選択肢を簡単に確認するほうが効率的な場合もあります。ここで紹介しているのは、あくまでも「基本」だと考えてください。
例題を解いてみよう
手順に沿って例題を解いてみます。
問17 私の背を押す母の目には光がない とありますが、これはどういうことですか。次のア~エの中からもっともよく当てはまるものを選び記号で答えなさい。
ア 冷たい態度を取ってきた母なので、祖父の容態が悪化し、これからずっと看病するのにうんざりしているということ。
イ 母が祖父を心を込めて看病しようとしているのに、それを邪魔する無神経な娘の言葉にいらだっているということ。
ウ 容態の悪い祖父と年老いた祖母を目の前にして、母がこれまで親孝行してこなかったことをくやみ、なやんでいるということ。
エ 以前は祖父に泣いてあやまっていた母だが、今日は祖父の容態が落ちついたので安心して涙を流さないでいられるということ。
(東洋英和女学院中等部 平成29年度 A日程)
本文を掲載することはできませんが問題ありません。こちらを例題に説明していきます。
ステップ1 設問をよく読み、なにが問われているのかを確認する
まずは設問をよく読み、なにが問われているのかを確認します。「どういうことですか」とありますので、「言い換えの問題」ということになります。つまり、傍線部を言い換えた選択肢が答えになるはずです。
ステップ2 どう考えれば答えにたどり着けそうかを考える
傍線部を確認してみましょう。「母の目には光がない」という表現がありますね。
まず「母の目には」とありますので、「母」について問われていることがわかります。「母」について書かれている情報を整理する必要がありそうですね。
次に「光がない」という表現があります。「光がない」は慣用的な表現になっているようにも思えますが、比喩的であることに間違いありません。傍線部に比喩表現がある場合、その内容を明らかにする必要があります。
つまり「母の目に光がない」がどういうことかを考えて、言い換えれば答えになるとわかるはずです。
ステップ3 本文の傍線部分(――部)と関係しそうな部分を確認し、ヒントがないか確認する
この問題は傍線部の前後だけを読んで解答することはできません。物語のはじめからここまでの内容をしっかり把握する必要があります。
本文中では、入院する祖父を母がはじめて見舞ったとき「ごめんなさい」と言いながら泣いていました。このときに泣いた理由は、詳しくはわかりません。ただ、主人公である娘の瑞穂を祖父母の家に預けていたこと、主人公の父親とは離婚(あるいは別居)していること、さらに「入院してからはじめてな泣くようなつまらない娘と孫しか持たない祖父」といった表現(実際には孫である主人公は泣きませんでしたが)から、母は祖父母に苦労をかけていたようだとわかります。
ステップ4 どんな内容が答えになるか見当をつける
ここまで考えたことをもとに、答えの見当をつけます。
【検討材料】
1、母は祖父母に苦労をかけていたようだ
2、「母の目には光がない」というマイナスの表現
こうしたことを考えると、「母は弱ってしまった祖父を目の前にして、若いころ苦労をかけたことを申し訳なく思っているのかな」と考えることができます。
ステップ5 選択肢から答えだと思われるものを見つける
いよいよ、選択肢を確認します。ステップ4で確認したことを踏まえて、各選択肢を読んでみましょう。難易度が低い問題の場合は、比較的 簡単に答えだと思われるものが見つかります。改めて問題と選択肢を見てください。
問17 私の背を押す母の目には光がない とありますが、これはどういうことですか。次のア~エの中からもっともよく当てはまるものを選び記号で答えなさい。
ア 冷たい態度を取ってきた母なので、祖父の容態が悪化し、これからずっと看病するのにうんざりしているということ。
イ 母が祖父を心を込めて看病しようとしているのに、それを邪魔する無神経な娘の言葉にいらだっているということ。
ウ 容態の悪い祖父と年老いた祖母を目の前にして、母がこれまで親孝行してこなかったことをくやみ、なやんでいるということ。
エ 以前は祖父に泣いてあやまっていた母だが、今日は祖父の容態が落ちついたので安心して涙を流さないでいられるということ。
ステップ4では「母は弱ってしまった祖父を目の前にして、若いころ苦労をかけたことを申し訳なく思っているのだろう」と確認しました。これに合いそうなものは、おそらく「ウ」ですね。
ただ、これで答えを確定するわけにはいきません。「ウ」の選択肢も含めて各選択肢を細かく検証してから答えを決めます。
このステップで、「これが答えかな」というものが見つからない場合もよくあります。その場合は次のステップに進んでしまいましょう。
ステップ6 選択肢を細かく検証する
それぞれの選択肢を細かく検証してみましょう。コツは選択肢を一気に読まないことです。たとえば「読点(、)」ごとに句切るとわかりやすくなります。
ア 冷たい態度を取ってきた母なので(OK)、祖父の容態が悪化し(OK)、これからずっと看病するのにうんざりしているということ(NO)。
イ 母が祖父を心を込めて看病しようとしているのに(?)、それを邪魔する無神経な娘の言葉にいらだっているということ(NO)。
ウ 容態の悪い祖父と年老いた祖母を目の前にして(OK)、母がこれまで親孝行してこなかったことをくやみ(OK)、なやんでいるということ(OK)。
エ 以前は祖父に泣いてあやまっていた母だが(OK)、今日は祖父の容態が落ちついたので安心して涙を流さないでいられるということ(NO)。
このように細かく選択肢を見ていきましょう。
一番簡単に外せるのは、「エ」でしょうか。「安心」という言葉が「母の目には光がない」というマイナスの表現と合いません。「ア」は「看病にうんざりしている」が不適切。「イ」は「母が祖父を心を込めて看病しようとしているのに」が微妙なのですが、そのあとの「それを邪魔する無神経な娘の言葉にいらだっているということ」が明らかに不適切ですね。
各選択肢を細かく検証して、ひとつでも適切でない言葉や語句があれば正解ではありません。
「ウ」の選択肢には不適切なところがありません。「母の目には光がない」を言い換えた言葉が「くやみ」「なやんでいる」だと考えられるので、やはりこれが正解で間違いないでしょう。
2つの選択肢で迷ってしまったら、比較して検討する
選択問題を解いていると、「5つの選択肢から2つにまでしぼれたのだけど、最終的にどちらを答えにすればいいかわからない」というようなことがあります。この場合は、2つの選択肢を比較して検討しましょう。
問12 あこがれ過ぎて桜のもとへ行ったきり とありますが、これは和歌の作者西行のどのような状態を言っていますか。もっともよくあてはまるものを次のア~エの中から一つ選び記号で答えなさい。
イ 何かを良いものだと思いこんで、そこから抜け出せずにいる状態。
エ 何かに夢中になって、そこからはなれられずとまどっている状態。
(東洋英和女学院中学部 2018年度 B日程)
仮にこの2つで迷ってしまったとしましょう。この場合、2つの選択肢を比較してみます。色分けするとわかりやすくなります。
問12 あこがれ過ぎて桜のもとへ行ったきり とありますが、これは和歌の作者西行のどのような状態を言っていますか。もっともよくあてはまるものを次のア~エの中から一つ選び記号で答えなさい。
イ 何かを良いものだと思いこんで、そこから抜け出せずにいる状態。
エ 何かに夢中になって、そこからはなれられずとまどっている状態。
「イ」と「エ」の選択肢の違いは、「とまどっている」という内容があるかどうか。「エ」にだけ「とまどっている」という内容がありますね。ですから、本文に戻って「とまどっている」という内容がふさわしいかどうかを確認すればいいということになります。
この問題の場合、「とまどっている」はふさわしくありませんので、正解は「イ」になります。
まとめ
開成や麻布、桜蔭といった記述しか出題されない最難関校を受験するのではない限り、選択問題を解く力は大切です。配点もかなりありますので、まさに合否を左右しかねません。
選択問題を解くには手順があります。設問を読んでいきなり選択肢を読むのではなく、基本の手順にしたがって解答を導き出しましょう。