サピックスの国語はA授業とB授業に分かれています。5年生まで通塾してきた方ならご存知のこととは思いますが、それぞれの範囲は以下の通りです。
- A授業…漢字を含む知識分野、短めの読解
- B授業…長文読解
A授業とB授業の範囲については、5年生までと基本的には同じです。ただ、6年生のA授業は5年生のA授業と異なることがあります。授業や家庭学習の時間を有意義なものにするために、授業やテキストがどのようなものなのか知っておくといいですね。
国語A授業の内容
まず、A授業では必ず「デイリーチェックテスト(D.Cテスト)」が実施されます。デイリーチェックとは、事前にテスト範囲が指定されたテストのこと。基本的には1週間の学習の成果が問われるようにできています。テスト範囲は決して少なくありませんが、1週間しっかり学習すれば得点できるはずですので、必ず90点以上取れるようにがんばりましょう。
デイリーチェックテストが終わったあとは、5回に1回の頻度で実施される「知の冒険」と、5回に4回の頻度で実施される読解を中心とした学習(名称はありません)に分かれます。
「知の冒険」の概要
「知の冒険」はその名の通り、熟語や言葉、文法などの知識を学習するものです。サピックスの現行カリキュラムでは、知識分野の学習については基本的に家庭学習に委ねられています。授業で知識分野を学習できる機会は貴重です。特に文法事項や韻文(詩、短歌、俳句)など、普段触れる機会の少ない分野については厚めに説明があると思います。しっかり話を聞き、授業内でおこなわれる練習問題、デイリーチェックのテストの範囲の家庭学習にも積極的に取り組みましょう。
読解を中心とした学習の概要
読解を中心とした学習では具体的な読解方法や問題の解き方を学ぶのはもちろんのこと、毎回文章のテーマをしぼって必要な知識を学んでいきます。中学受験で出題される文章は子ども向けではなく、本来は大人が読むことを想定して書かれいていることがほとんど。そうだとすると、大人であれば知っているはずのバックボーンを理解していなければなりません。このような「読解力以前の知識」も学ぶのですね。
国語Aテキストの構成
ここからは、読解を中心とした学習のテキストにしぼって説明します。このテキストの表紙には、たとえば以下のような記載があるのが特徴です。
文章テーマ 日本の伝統文化(論説文)
解法メソッド 選択問題の攻略1(主語に注目しよう!)
(62A-02より)
今回の授業でどんなことを学習するのかがはっきり明記されているので、授業前(授業中)にテキストが配られた段階で、その意識を持っておくといいですね。
解法メソッド
「解法メソッド」とは文字通り、問題の解法を学ぶものです。3~4p程度の短めの文章を使って、選択問題や抜き出し問題などの解き方を身につけていきます。5年生までのAテキストにあった「読解メソッド」は文章の読み方を学ぶものでしたが、それよりも一歩学習が進んだのだと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
解法メソッドには7~8問程度が配置されていますが、そのなかに「今日のコレいち問」と名付けられた問題があります。これは中学入試によくあるパターンの問題の具体的な解き方を学んでいくためのもの。論理的あるいはテクニカルに考えれば解けるタイプの問題については、「今日のコレいち問」の内容を毎回しっかりと学習するだけでかなり正確に解けるようになっていきます。
サピックスのテキストは数年前にフルモデルチェンジされました。解法メソッドはそのときに新たに登場したもので、サピックス国語科が非常に大切にしているものです。マンスリーテストなどで、「今日のコレいち問」を学習しているかが明らかに試されている問題が出たこともあります。
問題を読んでから答えを出すまでの考え方や手順を理解して、設問を通して練習しようね!
コトノハ実践編
「コトノハ実践編」では、毎回ピックアップされた文章テーマによく出る言葉について学習します。授業用問題と家庭学習用問題がありますが、時間の都合上、授業用問題のすべてが授業中に終わるとは限りません。その場合は、授業用問題も家庭学習で拾っていく必要があります。
たとえば、「日本の伝統文化」をピックアップしたテキストで取り上げられているのは、「和」「粋」「侘び、寂び」といった言葉です。これらの言葉が本文に出てきたとき、意味がわからなければ読解に支障をきたす恐れがあります。
ここからは筆者の考えです。「読解問題はあくまで読解問題。わからない言葉があっても読み解けばいいし、必要なら類推すればいい」という考え方があって、筆者個人としても基本的に賛成しています。ただ、これは高校受験生、大学受験生には有効なもので、中学受験生にそのまま当てはめられるとは限りません。特に国語の苦手な中学受験生は大人の想像以上に知らない言葉が多いもの。せっかくどの辺りを読めば答えが出る可能性があるかがわかっても、そこに書かれている言葉がわからないために失点してしまうことがよくあります。
いくら文章の読み方や問題の解き方を学んでも、前提となる「言葉の知識(語彙力)」がなければ結局は得点につながりません。その前提知識をコトノハ実践編で身につけられると考えています。
コトノハ実践編は「授業用問題」と「家庭学習用問題」に分かれているよ! 授業用問題のすべてを授業中にやれないこともあるから、家でやるといいね!
難関校は読解力ばかりが問われるというイメージがあるかもしれませんが、入試問題を分析してみると30~40%近くが知識分野の出題だったということもあります。しっかり学習しておきましょう。
読解演習
国語Aの授業中に扱うのは「デイリーチェックテスト」「解法メソッド」「コトノハ実践編(授業用問題)」までです。読解演習は基本的に家庭学習用となります。
読解演習は解法メソッドよりも長い読解問題に取り組むものです。文章量としてはマンスリーテストや組分けテストの読解問題より少なめとなっています。ポイントは解法メソッドの「今日のコレいち問」で学んだ手順で解ける問題が紛れていることです。「これって『今日のコレいち問』と同じだ!」……とはならなくても、教わった手順通りに解けるようになるといいですね。
次回のデイリーチェックの出題範囲
最後に「次回のデイリーチェックの出題範囲」が見開きで1p(つまり2p)あります。入試頻出の内容ばかりですし、このページの内容がそのまま次のデイリーチェックで出題されますので、しっかり学習しておきましょう。
くれぐれも「答えを丸暗記する」ことのないようにね! 意味、例文などを意識して、言葉自体を理解しよう!
漢字を含む知識分野を学習するコツは、デイリーチェックテストの前日にまとめて“片付ける”のではなく、1週間かけて繰り返し学習することです。そして、デイリーチェックテストの前日には、本当に覚えているかを確認するために”セルフチェックテスト”をするといいですね。もし覚えていないものがあれば、そのときにまた確認、練習するといいですね。
最後に
サピックスの国語のA授業は、「5年生前期」「5年生後期」「6年生前期」「6年生後期」と進むにつれて形式が少しずつ変わります。そのため、どのように取り組めばいいのかわからなくなってしまうことがあるようです。今回は6年生前期の国語Aについて、筆者がサピックスに勤務した経験から紹介しました。ただし、各校舎・各講師によって方針が少しずつ異なっている可能性はあります。不明点や疑問点があれば、所属校舎の先生に問い合わせてみましょう。