中学受験をさせるかどうかを決めるときにネックとなるのが、塾の授業料の高さです。一般的に受験勉強をスタートするのは新4年生(3年生)の2月から。そこから入試を終える6年生までの3年間で200万円~250万円程度かかるといわれています。
中学受験塾にかかる費用の高さを知ったときに考えがちなのは……。
「塾に行かなくても合格できるのでは?」
この気持ちはよくわかります。大学受験や高校受験はさすがに塾に行かないと合格することが難しそうですが、あくまで「中学」受験です。小学校で教わった内容ぐらいなら親が教えればなんとか合格できるのではないかと考えてしまうわけですね。実際、筆者が人に「小学生に中学受験の勉強を教えているんですよ」と話すと、あからさまに「なんだ小学生相手か……」という反応をされることがあります。世の中の人が「小学生の勉強=簡単」と考えているのだということがよくわかります。
結論から先に書きます。
中学受験塾に通わずに中学受験に成功することは、ほぼ確実に不可能です。
2017年に放送されたテレビドラマ「下剋上受験」では、塾に行かずに桜蔭中学の入試に挑む父娘の姿が描かれました。ノンフィクション小説が原作とは言え、あれは特殊中の特殊事例。真に受けてはいけません(もちろん作品を批判しているわけではありません)。
小学生の勉強であるにもかかわらず、なぜ塾に通わなければ中学受験を突破することができないのでしょうか。
中学入試の勉強は小学校のレベルをはるかに超えている
中学入試では小学校で教えられる勉強を超越するレベルの学力が要求されます。
もっとも“中学受験らしさ”を表している算数は、鶴亀算など小学校では教わらない解法を使わざるを得ない問題が出題されます。国語は大学入試センター試験の現代文を超えるレベルの文章が出るのが当たり前。理科は生物、物理、化学、地学など多岐にわたる分野を学習しなければならず、社会は地理、歴史、公民を網羅しなければなりません。中学入試のこうした現状を考えれば、多くの人が塾に行かずに合格するのは難しいのではないかと思うのではないでしょうか。
「マイペースに勉強して合格します」では間に合わない
「うちの子はマイペースに勉強して合格させたいんです」という声を聞くことが時々あります。こうした気持ちはわからなくもありません。中学受験というと「本来のびのびと遊んでいられるはずの小学生が過度なプレッシャーとストレスをかけられるもの」というイメージを持つ人が少なくないからです。
実際の中学受験がどういうものであるかについてはここでは論じません。ただ、中学入試で要求されるレベルは非常に高く、学習量が膨大であることは事実です。ですから、子どもの個性やスピードに合わせて勉強する……というのではとても間に合いません。
進学塾は「どうすれば効率的に中学入試に合格する力をつけてもらうことができるか」という観点から独自のカリキュラムを組んでいます。苦労することばかりだと思いますが、進学塾のカリキュラムについていくことが合格への最短距離となるのです。
子どもには競い合う環境が必要
中学入試に合格するためには、同じ教室で勉強している受験生と競争しながら学力を高めていくことが大切です。大手の進学塾は、同じ志望校を目指す受験生を集めた対策クラスや対策授業を用意しています。このなかで得点という客観的な数字をもとに競争しながら、志望校合格に近付いていくのです。
「うちの子は競争が苦手なので、一人で勉強させたほうがいいと思います」という声を聞くことがありますが、間違えてはいけません。そもそも入試は競争です。また、競争が苦手な子も教室にいるうちに「嬉しい」「悔しい」という気持ちを感じるようになり、競争することを当たり前に思うようになっていくものです。
得点による競争は、大人が思うよりも子どものやる気に火をつけます。時には大きなプレッシャーになることもありますが、その分だけ学力が伸びていきます。自学で学習している受験生は、どんなに工夫してもこの環境を作り出すことはできません。
「うちの子は競争が苦手なので、一人で勉強させたほうがいいいと思います」という気持ちも理解できますが、そのせいで逆に子どもの可能性を潰すことにもなりかねないのです。
塾の講師にいつでも相談できる環境が必要
受験勉強をしていると受験生本人だけでなく、お父様やお母様も不安なことやわからないことにたくさんぶつかります。不安なことがあったときに大切なことは、いつでも相談できる相手がいること。塾の講師はそのためにぴったりの存在です。
塾講師は、毎年たくさんの受験生やご両親と接しています。勉強のこと、生活のこと、いまやるべきこと、逆にいまやるべきでないことなど、毎週のように寄せられるたくさんの相談に一つずつ答えを出しているのです。
もしも塾に通っていなければ、このような不明点をすべて自分で解決しなければなりません。これは本当に骨の折れることですし、入試の前に体力も精神もすり減らしてしまいます。いつでも塾に相談できる状態にしておくことはとても大切です。
規模の大きな模試を効果的に活用することができる
大手の進学塾は大きな模試を行っています。四谷大塚の「合不合判定テスト」、日能研の「合格力判定テスト、サピックスの「合格力判定サピックスオープン」など、各塾がこれまでに蓄積した膨大なデータを活用したテストを実施しているのです。
中学入試を成功させるためには、各受験生のデータを継続的に集めて客観的に実力を判断することが重要。もちろん塾に通っていなくても模試を受けることはできます。しかし、データをもとに志望校合格までの対策を担当講師と一緒に考えられるのは、塾に通っている生徒だけです。
受験というと実際にテストを受ける子どもだけの問題と考えられがちですが、実際にはまったく違います。受験生には勉強に専念してもらい、志望校合格までの“作戦”は大人が数人がかりで綿密に立てているのです。
まとめ 中学受験をするなら塾に行く必要がある理由
- 中学入試の勉強は小学校のレベルをはるかに超えている
- 「マイペースに勉強して合格します」では間に合わない
- 子どもには競い合う環境が必要
- 塾の講師にいつでも相談できる環境が必要
- 規模の大きな模試を効果的に活用することができる
たとえば、法律が関係することでトラブルが起きたときは、迷うことなく弁護士に相談する人が多いはず。大きな病気の可能性があるときは、すぐに病院に行くでしょう。それは専門家に依頼することによる、いい結果を期待するからです。
中学受験もこれと同じです。塾に通えば金銭的にだけではなく、肉体的にも精神的にもコストがかかります。しかし、「中学受験指導歴30年」というような専門の進学塾を利用したほうが、効率的にいい結果につながる可能性が高くなるのです。中学受験で希望している中学校の合格を目指すのなら、ぜひ専門の塾に通ってください。