「国語のテストは時間が足りなくて最後まで解けない!」と悩む声をよく聞きます。中学入試の国語の本文は長文化していますので、仕方ないことでしょう。また、本文の内容も難しくなっています。中学受験と大学受験で同じ文章が出題されるということも珍しくありません。もちろん設問の難易度に差はありますが、それぐらい難しくなっているわけです。
ただ、合格することを考えると「仕方ない」で済ますわけにもいきません。入試本番までに国語を時間内に終わらせられるようになるには、どんなことに取り組めばいいのでしょうか。
筆者は中学受験の家庭教師をしていますので中学受験生を想定して書きますが、高校受験や大学受験の現代文も基本は同じです。つまり、中学受験生でいるあいだに対策法や練習法を知っておけば、将来的にも役立つということになります。
時間が足りなくなる原因を分析する
「国語の問題を解く」とひとくちに言っても、「本文を読む→設問を理解する→解答する」というプロセスに分かれています。まずは、どこに時間がかかっているのかを探ってみるといいですね。
筆者が以前、時間内に手際よく解くことが求められる中学校を志望する受験生と一緒に学習していたときのことです。過去問を何度か解いても最後まで終わらなかったため、2~3度、私の隣で解いてもらったことがあります。その際、私は以下のように問題を分け、それぞれにかかる時間を記録しました。
- 大問1:漢字
- 大問2:「読む」「解く」
- 大問3:「読む」「解く」
- 大問4:「読む」「解く」
- 大問5:「読む」「解く」
時間を計ってみると「読む」「解く」の両方に時間がかかっていたのですが、特に「読む」ことに想像以上に時間がかかっていることがわかりました(大問1の漢字については、悩むことなく当然のように解いていました)。受験生本人としても、読むスピードが遅いということはなんとなくわかっていたようですが、「こんなに時間がかかっているとは思わなかった」ということでした。
原因がわかれば解決する努力ができます。それではどのように解決していけばよいのでしょうか。
文章量・問題量を確認しておく
まず大切なのは、テストや演習がはじまると同時に文章や問題の量をしっかり確認することです。
「国語の時間が足りない!」と悩む受験生を見ていると、1ページ目から自分のペースで解いていることがあります。そのため、あとのほうになって「あれ、時間が足りない……!」ということになってしまうのですね。
テストや演習がはじまったときに、まず文章量や問題量を確認しておけば、「今回は少し多いな、急ぐ必要がありそうだな」と意識してから問題を解いていけます。
「時間が足りない!」を解決する、日々の意識と練習法
それでは「本文を読む」「設問を理解する」「問題を解く」という各プロセスのスピードを上げていくには、どのようなことを意識していけばよいでしょうか。
読むスピード自体を速く!(本文を読む)
本文を速く読む意識はどうしても必要です。
こうお話しすると「早く読むと文字だけ追ってしまって、内容が頭に入らないんです」という声を聞くことがあります。もちろん、その気持ちがわからないわけではありません。ただ、これは練習次第で克服できます。
常に意味をギリギリ理解できるスピードを意識して読んでみる(読み終わったら、本当に理解できているか簡単に確認する)。
この繰り返しでだんだん早くなってきます。もし一人で読むとどうしても遅くなってしまう……ということであれば、タイマーを用意したうえで時間を決めて読む練習をしましょう。制限時間内に読む練習を繰り返すことで、少しずつ速くなっていきます。
その意味で塾の集団授業は非常に効果的です。筆者が勤務していた塾では、毎週席を得点順に並び替えていました。他の受験生に負けまいと、ギリギリ理解できるスピードを追求するように自然となっていきます。
本文を読んだあと、意味を理解できているかどうか確認するには、親御さんのご協力があるとスムーズです。ぜひ親御さんも本文を読んでから、どういう内容であったか確認してあげてください。
抽象的表現・具体的表現を見分けてメリハリある読み方を!(本文を読む)
「メリハリをつけて本文を読みましょう」と言われたことのある受験生はいると思います。しかし、「メリハリをつけて読むって、要するにどうすればいいのだろう……?」と疑問を感じる受験生もいるのではないでしょうか。
「メリハリをつけて読む」とは、たとえば説明的文章であれば抽象的表現と具体的表現を見分けて読むということです。
ご存知の通り、説明的文章は抽象的表現と具体的表現(具体例)の繰り返しでできています。そして、筆者の意見や主張は抽象的表現の部分に書かれているものです。具体例は筆者の意見に説得力を持たせるための説明に過ぎません。
文章を読むのに時間がかかる受験生を見ていると、抽象的表現の部分も具体例の部分も同じようにじっくり読んでいることがあります。これではどうしても時間がかかってしまいますよね。
くり返しになりますが、筆者の意見や主張は具体例前後の抽象的表現の部分に書かれています。そうであれば、こちらを重視して読んでいきましょう。
具体例には興味深いことが書かれていることが多いので、「へえ、おもしろいなあ」とじっくり読みたくなります。その気持ちはわかるのですが、「これはテスト!」と割り切って簡単に意味を理解する程度にとどめましょう。
語彙を増やす(本文を読む)
本文を速く読むには、語彙力を鍛えることも大切です。語彙が少ないと本文を読みながら、「これどういう意味だ?」といちいち考えながら読まなければなりません。これではどうしても時間がかかってしまいます。
意味のわからない言葉を気にせずに読み進める方法も考えられますが、これでは読むスピードを保てたとしても読み終わったときに意味を理解していなかったということになりかねません。
知っている言葉をできるだけ多く持っているほうが、本文の意味を理解しながらスムーズに読み進められます。
そうだとは言え、語彙にはゴールがないため、なにをどこまで学習すればいいのか判断できないのではないでしょうか。その場合は、以下の2点を意識して学習を進めてください。
- 塾から指示されているものについてはしっかりと学習しましょう。
- 本文のなかでわからない言葉が出てきたら、そのままにしないで意味を調べる。
この2点を半年、1年、2年と続けるだけで、かなりの語彙力になるはずです。
なにが問われているかを確認する(設問を理解する)
国語の時間が足りなくなってしまう受験生を見ていると、設問でなにを問われているかを理解しないまま、なんとなく本文を見ていることがあります。
問題を解くには「なにが問われているか」をしっかり理解しなければなりません。「傍線部の理由が聞かれているのだな」「傍線部を言い換えた表現を見つければいいのだな」「気持ちの変化が問われているのだな」などと確認する意識を持っておきましょう。
設問を理解するのに役立つのが、「設問に線を引く」という作業です。たとえば『傍線部に「冷静に話すつもりだったが、思わず声を荒らげた」とありますが、このときの主人公の気持ちをくわしく説明しなさい』という問題が出たとします。このとき「主人公の気持ち」「くわしく」に線を引いておけば、「そうか、主人公の気持ちを答えるんだな」と意識できますし、「くわしくと指定されているから、少し長くなる可能性があるな。気持ちの変化の形で書く必要があるかもしれいな」と意識できますね。
問題の解き方を身につける(問題を解く)
問題を速く解くには、問題の解き方を身につける必要があります。
- 気持ちが問われたら、まずは選択肢のどこに注目するのか
- 指示語の内容が問われたらどんな手順で答えにたどりつけばいいのか
- 気持ちの変化が問われたらどのようなことに注意して答えを考えればいいのか
- 傍線部が比喩表現で「どのようなこと」と問われたら、なにをすればいいのか
- 抜き出し問題で該当箇所を見つけるためには、どのようなアプローチをしたらいいのか
たとえば、このようなことを理解していなければ、毎回「どうやって解こうかな……」と考えて答えを考えていかなければなりません。一方、問題の解き方を理解していれば、効率的かつスピーディーに問題を解いていけます。
抜き出し問題は時間がかかる!
国語の読解問題は、主に「選択問題」「抜き出し問題」「記述問題」で構成されています。この3つのうち、どれに一番時間がかかりますか?
あくまで筆者の印象ですが、「国語の時間が足りない!」と悩む受験生は、抜き出し問題に必要以上の時間をかけてしまっていることがあります。「なぜ、そんなに時間をかけたの?」と聞くと、「もう少しで見つけられる気がしたから」という返事があることがほとんどです。
これが抜き出し問題の「沼」です。
「本文のどこかにあるのだから、見つけられるはず!」という気持ちがあり、「あと少しだけ、あと少しだけ探してみよう」と考え、気づくと3分、5分……と経ってしまうのです。
それでは、抜き出し問題はそこまでの時間をかけて解くほどの“価値”のある問題でしょうか。いままで解いてきたテストや演習問題を確認していただきたいのですが、選択問題とほとんど同じ、あるいは完全に同じ配点ではないでしょうか。
つまり、たった1つの抜き出し問題に5分かけるよりも、その時間で選択問題を2つ解いたほうが効率的に得点できるということなのです。
そう考えると、テスト中に抜き出し問題を1分ぐらい考えて答えがわからなければ、「これは答えのわからない問題」と割り切って次の問題に進むというのも、国語のテストをスピーディーに終わらせる方法の一つということになります。
もちろん、いつかは抜き出し問題を克服しなければなりません。普段の学習ではしっかり練習していきましょう。
文章を速く読むタイプor問題を速く解くタイプ
時間内に国語の問題を終わらせられるようになるために、取り組んでほしいことや意識してほしいこと、練習法を紹介してきました。
もちろん、紹介したすべてのことに可能な限り取り組んでいただきたいのですが、「そうは言っても、そんなに速く文章を読めないよ!」「手際よく問題を解けないよ!」といった声も聞こえてきそうです。
実はそれでも大丈夫です。
国語を時間内に終わらせられる受験生も、紹介したすべてが完璧であるわけではありません。おおまかに分類すると「文章を読むのが速い+問題をじっくり解く」というタイプの受験生と、「文章をじっくり読む+問題をスピーディーに解く」タイプの受験生がいます。
筆者はどちらかというと後者です。少しじっくりめに読んで内容を理解し、問題を手際よく処理するほうがいい結果につながる傾向があります。私のこの特性からすると、問題の解き方についてはしっかり身につけていないといけないことになります。一方、前者の場合は、文章を読むスピードだけは意識して速くしていなければなりません。
このように「自分にはどこで時間を削るのが向いているのか」「自分の特性を活かすにはどのポイントを重視してトレーニングを積むべきなのか」を考えていくのも、非常に重要です。
接続語・知識系問題の扱いは?
読解問題のなかに、接続語や副詞、適切な言葉を入れる問題がまざっていることがあります。こうした問題については、「読みながら解いたほうが時間短縮になるのでは?」と考える受験生は少なくありません。効率的に解けるのであれば読みながら解くのも一案です。
ちなみに筆者の場合、本文を最後まで通して読んでから問題を解きます。その理由は主に2つです。まずは、本文を通して読んだほうが論理の流れが分断されず、内容を理解しやすいから。もう1つは、本文を読みながらペラペラとページをめくると、それだけ時間をロスしてしまうからです。
もちろん問題を解く順番に正解はありませんので、何度か試して自分にあった方法を見つけるといいですね。
特に時間が足りなくなりそうな問題を出す中学校の例
最後に、特に時間が足りなくなりそうな問題を出す中学校を紹介します(あくまで一例です)。
女子学院中
女子学院中の国語の試験時間は40分です。かつては選択問題と抜き出し問題を中心に構成されていましたが、近年はそれなりの文字数が必要な記述問題も出題されるようになっています。文章量はさほど多くありませんが、内容を理解して効率的に解答することが必要です。
慶應義塾普通部
慶應義塾普通部の国語の試験時間は40分です。選択問題や抜き出し問題、短めの記述問題が中心ですが、読解問題が大問1~3まであることがあります。また、本文の内容をもとに図を書く問題や簡単な計算をする問題などがあり、解きづらいことがあるのが特徴です。過去問で時間の感覚に慣れておきましょう。
吉祥女子中
吉祥女子中の国語の試験時間は50分となっています。与えられる時間としては一般的ですが、とにかく問題数が多いのが特徴です。また、問題内容も選択問題、抜き出し問題、記述問題のほか、自由記述が出題されることがあり時間がかかります。「速く読む」「効率的に解く」といったことを意識して、しっかり練習を積んでおきましょう。
青山学院中
青山学院中の国語の試験時間は50分です。大問1つの文章量は多くありませんが、4題の読解問題があるため、どうしても時間がかかります。イメージとしては短距離を2回、中距離を2回走るような感覚です。集中力を切らさずに解いていくことを意識しましょう。なお、青山学院の試験は国語も横書きです。大きな問題にはならないと思いますが、慣れておくようにするといいですね。
日本大学中(日吉)
日本大学中の国語の試験時間は50分です。読解問題は4題となっているので、1題あたり11分程度で解いていかなければなりません。また、抜き出し問題が多いため克服しておく必要があります。最難関と比較して偏差値は高くありませんが、スピード勝負になることを意識しておきましょう。
まとめ
「国語の時間が足りない!」を解決するために、日々意識しておくことと練習しておくことを紹介しました。主に以下のことをしっかり意識しておくとよいでしょう。
- 読むスピード自体を速く!(本文を読む)
- 抽象的表現・具体的表現を見分けてメリハリある読み方を!(本文を読む)
- 語彙を増やす(本文を読む)
- なにが問われているかを確認する(設問を理解する)
- 問題の解き方を身につける(問題を解く)
国語の時間が足りない問題は、意識と練習次第で解決できることがほとんどです。この記事がお役に立つことを願っています。