中学受験生のいるご家庭にとって、6年生の秋の大仕事と言えば具体的な受験校やスケジュールの決定です。これがなかなか難しいもの。特にはじめての中学受験だと「いったいどうやって受験スケジュールを決めればいいのか……」と感じてしまうかもしれませんね。
では、どうやって受験スケジュールを決めればいいのでしょうか。中学受験塾講師&家庭教師としての立場から、「いつまでに」「どんな考え方で」決めればいいのかを説明します。
受験校とスケジュールはいつまでに決める?
まず、受験校とスケジュールはいつまでに決めればいいのでしょうか。大手塾に通っている場合は、6年生の秋に塾との面談があると思います。いったん、その前に仮スケジュールを組んでおきましょう。そして塾との面談を受けて、スケジュールを固めていけばOKです。
しかしながら、この時期は入試本番まで2~3か月以上ありますので、完全な受験スケジュールを決められないことがあります。そんなときは「決められないのはうちだけ? ほかのご家庭はもうスケジュールをしっかり決めてまい進しているのでは!?」と考えて不安になりがちです。でも、そんなことはありません。体感ですが7割以上のご家庭は、6年生秋の段階で最終的な受験スケジュールを決められていません。逆に言えば、この時期までに完璧な受験スケジュールを決められるご家庭のほうが少ないのです。
ただ、どうしても決めておきたい第一志望校です。
ご存じの通り、入試問題は中学校によってかなりの違いがあります。中学校が入学してほしい受験生像によって、問題の傾向が明確に異なるのです。
合格するには、当然のことながら中学校の入試問題に合わせた対策が必要になります。もし本番まで2~3か月の時点で第一志望校が決まっていなかったとしたら、どうなるでしょうか。その後、第一志望校を決めたとしても、対策が間に合わなくなってしまいますね。
まず決めるのは第一志望校。他の受験校については、そこから順々に決めていきましょう。
あえて時期を決めるなら、このようにしてみてはいかがですか?
第一志望校…9~10月まで
第二、第三志望校…11月まで
第四、第五志望校…12月前半
受験校とスケジュールはどのような考え方で決める?
受験校とスケジュールの決め方は主に2つあります。
2、2/1~2/5までチャレンジ校から適正校、安全校までバランスよく受験
(首都圏を例に説明)
まず「2/1~2/5までハイレベルの学校を受験」は、いわゆるトップ校を目指せる受験生に多いパターンです。常にトップクラスにいる受験生が「2/1 開成→2/2 栄光(聖光)→2/3 筑駒(浅野)→2/4 聖光→2/5 渋渋」のように受験することはよくあります。
問題になるのは、偏差値的にはトップよりも少し下にいる受験生がこのパターンのスケジュールを組んだとき。「全部不合格になったら公立に進学します」という覚悟があるのなら仕方ないのかもしれませんが、そうでないなら、このパターンはおすすめしません。
次に「2/1~2/5までチャレンジ校から適正校、安全校までバランスよく受験」。たとえば、「2/1 海城→2/2 世田谷学園→2/3 海城(2/1不合格の場合)or 学芸大世田谷→2/4世田谷学園 2/5 本郷」のようなパターンです。このスケジュールからは「2/2と2/4の世田谷学園に合格すれば、この受験は成功と考えよう」というご家庭の方針が読み取れます。受験生本人もご家庭としても、本当は海城あるいはそれに相当する偏差値の中学校に進学したいのでしょう。しかしながら、それにこだわるあまりすべて不合格になってしまう危険を回避して、こうしたスケジュールを組んだのだと考えられます。
筆者としては、後者のパターンでスケジュールを組むのがおすすめです。第1志望校を受け、万一のときのために進学する学校をしっかり作っておく。こうした観点からスケジュールを組むといいですね。
2/1は第一志望校? それとも比較的安全な第二志望校?
スケジュールを決めるときに悩ましいのが、2/1に第一志望校を受験するか志望度は低いが比較的安全な学校を受験するかということです。
たとえば、このような受験生がいたとします。
- 神奈川県内在住の男子
- サピックスに在籍 偏差値45
- 第一志望校 サレジオ学院(偏差値:2/1=50、2/4=55)
- 第二志望校 攻玉社(偏差値:2/1=45、2/2=55)
この受験生は2/1、サレジオと攻玉社のどちらを受験すればいいのでしょうか。当然、第一志望校のサレジオ学院を受験すべきだと考えるかもしれません。しかし、本人の偏差値45と合格のための偏差値は50と比較すると「5ポイント」の差があります。これぐらいの差であれば合格して帰ってくることはよくありますが、不合格になる可能性が高いのも事実です。翌日2/2には第二志望校の攻玉社が控えていますが、こちらの偏差値は55。本人の偏差値と比較すると「10ポイント」もの差があります。合格の可能性はかなり低いと言えるでしょう。
そうであれば、2/1のサレジオ学院を回避して、2/1から攻玉社を受験してみてはどうでしょうか。本人の偏差値が45、2/1の攻玉社の偏差値も45なので、その差は「0ポイント」です。これならかなり高い確率で合格して帰ってくると考えられます。
ただし、第一志望校のサレジオ学院は2/4に受験せざるを得なくなります。偏差値は55。本人とはやはり「10ポイント」の差がありますので、合格の可能性は低いでしょう。つまり、2/1に攻玉社を受験した場合、この受験生が第一志望校のサレジオ学院に進学する可能性は、ほとんどなくなってしまうということです。
2/1に第一志望校を受験するか、安全策を取って偏差値的にやや低い第二志望校を受験するか……。これは本当に悩ましい問題。どれが正解かを一概に決めることはできません。最後は本人とご家庭が納得するようなスケジュールを組むしかないのです。
過去問の相性で受験校を決めるのはアリ? ナシ?
受験校選びに行き詰まってくると、「過去問との相性で受験校を決めればいいのでは?」というアイディアを思いつくことがあります。
たとえば、「第一志望校は雙葉だけれど、試しにフェリスをやってみたらすごくよく解けてしまった」というようなことはあります。それならもう雙葉をやめてフェリスを第一志望校にしようと考えたくなるのも無理はありません。
これも一つの受験校の決め方なので、間違いではないでしょう。ただ、最低でも以下については確認してください。
- お子さんは本当に第一志望校を変えることに納得しているのか。
- 学校の雰囲気や方針に問題はないか(宗教色なども含めて)
- 通学時間に無理はないか。
例に出した雙葉とフェリスでは、入学する受験生の雰囲気が異なります。どちらにどういう生徒が多いかなどをここに記述するのは控えますが、私がこれまで担当してきた受験生の顔を思い浮かべると明確に違います。つまり学校の雰囲気が大きく異なるということです。
お子様は合格したあと、その中学校に通わなければなりません。過去問との相性は受験校決定のひとつの要素ではありますが、それですべてを決めるのはよくありませんね。
まとめ
今回のまとめです。
・最終的な受験スケジュールはチャレンジ校、適正校、安全校とバランスよく配置するのがおすすめ。
・2/1にチャレンジ校を受験するか、比較的安全な中学校を受験するかは本人の意思や性格、ご家庭の方針次第。
・過去問との相性で受験校を決めるのもひとつの方法だが、それだけで決めるのはおすすめできない。
悔いのない受験になることを、心から祈っております!