中学受験対策の一つに、過去問の演習があります。もっとも、これは中学受験に限ったことではありませんね。志望する学校が過去に出題した問題を解いて対策するのは、高校受験や大学受験にも共通しています。
中学受験の場合、過去問は「いつごろから」「どのような意識で」取り組めばいいでしょうか。元中学受験塾講師で現在は中学受験専門の家庭教師・ライターとして活動している筆者が説明します。
過去問に取り組む目的
そもそも中学受験対策として過去問に取り組む必要があるのはなぜでしょうか。まずはここを考えてみます。
中学校にはそれぞれ、入学してほしい受験生像があります。噛み砕いて言えば「こんな受験生がほしい」という思いがあるわけです。入試問題にはその思いがよく表れます。そして、それが積何年も積み重なったものが「傾向」です。
過去問を解く目的は、この傾向を知ることにあります。
どのような問題が出やすいのか、毎年同じような形で出題されている問題はないか、どのようなところに注意すべきなのか……。こうした意識を持って学習するために、過去問を解くのですね。
過去問には、いつごろから取り組む?
こんなことがありました。カフェで休憩がてら仕事をしていると、隣のテーブルにやってきたお子さんが過去問を解きはじめたのです。お母さまはその様子を見守っていらっしゃいます。時期は入試が終わった直後の2月上旬。おそらく新6年生になるお子さんでしょう。
筆者はそれを見て驚いてしまいました。新6年生の2月というと、まだ基礎学力もままならない時期。そんな時期に過去問に取り組んでも満足に解けるわけがありませんし、対策にもなりません。
また志望校が固まってから、再度その問題に取り組んだとします。しかし、一度中途半端に触れてしまっているため、やはり対策になりません。これではなんのために過去問を解くのかわかりませんね。
では、過去問にはいつごろから取り組めばいいでしょうか。
結論を書くと、6年生の9月ごろから取り組みはじめれば問題ありません。大きく力を伸ばした夏期講習のあとが志望校の過去問に取り組むのにぴったりの時期です。先ほどのお母様は「少しでも早く志望校の対策を!」と考えたのだと思いますが、プラスになったとは言いがたいというのが正直なところです。
何年分の過去問を解く?
何年分の過去問に取り組めばいいでしょうか。筆者は以下のように取り組むのがいいのではないかと考えています。
・第一志望校…過去問1冊(5回分程度)
・第二志望校…過去問1冊(5回分程度)
・第三志望校…過去問3年分(3回分)
・第四志望校…過去問1~3年分
・第五志望校…過去問1~3年分
週に1年分(1回分)取り組むとすると、9月から1月まで20回前後組めることになります。この計算で考えると上記の回数でもキャパオーバーかもしれません。
ただ、取り組む回数は受験生によって異なります。第一志望の過去問を1冊解いてしまったあと、Yahoo!オークションやメルカリなどで手元にあるものよりも以前の過去問を入手して取り組む受験生もいます。
過去問に取り組むときに忘れてはいけないこと
過去問に取り組むとき、気をつけなければいけないことがあります。それは「過去問はあくまで『過去に出題された問題』であるということ」です。
ときどき「過去問ができれば合格できますか?」というご質問をいただくことがあります。もちろん学力自体が上がり過去問で合格平均点以上を取れれば、合格可能性が高いであろうということが言えます。しかし、塾で課せられた宿題や日々の学習をおろそかにして、過去問ばかりに取り組めば合格できるというわけではないのです。
過去問はあくまで過去の問題。同じ問題はもう二度と出題されません。過去問に取り組むことで傾向を知ったら、それを意識しながら学習に取り組むといいですね。
合格する受験生は、志望校対策だけでなく基礎的な学力向上にも努めているもの。入試が近づくにつれて無駄に見えてしまう塾のカリキュラムは、全体的な学力の向上に役立っているのです。
同じ過去問を何度も繰り返し解く受験生がいます。やはり「過去問はあくまでも過去に出題された問題である」と理由から、あまりおすすめしていません。間違えた問題の復習を1度やれば充分ですね。。
合格最低点・合格平均点に届かない!
過去問に取り組んでいると、「合格最低点(or 合格平均点)に届かない!」ということがよく起こります。それが9月の段階&第一志望校だったとしたらなおさらです。
それでは過去問の合格最低点に届かない場合、どう考えればいいでしょうか。
もう一度、過去問に取り組む目的を考えてみましょう。志望校の傾向を知り、日々の学習に活かすためでしたね。ですから、以下のようなことを意識してください。
・まずは間違えた問題の復習
・過去問に取り組むことで浮き彫りになった苦手分野の克服(塾のテキストや副教材を利用 or 塾講師や家庭教師に相談)
・日々の学習と過去問は、2つで1つ。車の両輪だと考える。
直前期に急きょ受験校を変更したら
過去問に取り組んできたものの、合格最低点(or 合格平均点)と自分の点数の差がなかなか埋まらない……。このような理由から、直前期(12~1月)になって志望校を変えることはよくあります。
こういった場合は急いで過去問に取り組まなければなりません。12月に志望校を変えたのであれば、まだ時間はあります。3~5回分は取り組んで傾向を体に染み込ませましょう。もちろんその間に取り組む日々の学習でも、その傾向を意識しながら進めるといいですね。
ひとりで過去問に取り組むのが難しい場合は、塾を上手に利用しましょう。ただ1月に入ると塾が過去問を見てくれないことがあります。もし家庭教師がついていれば、見てもらえますね。
中学受験はチーム戦です。受験生本人、お母様、お父様、塾、家庭教師それぞれに役割があります。「どんなチームを作るのか?」「家庭教師や個別指導は必要か?」などを早い段階で考えておくといいですね。。
まとめ
・過去問に取り組む目的は、中学校の傾向を知り対策を立てること。
・過去問に取り組む時期は、6年生9月からで充分。早ければリードできるというものではないということを知っておく。
・過去問に取り組んでわかったことを、日々の学習に活かすことが大切。
・過去問に取り組む時間は9~1月の5か月。週に1年分(1回分)取り組むとすると、トータルで20回取り組める。
・過去問をやっていれば合格できるというものではない。
・急きょ志望校を変えた場合は、すみやかに過去問に取り組む必要がある。チームに家庭教師がいれば、こうした事態にも対応しやすい。
過去問は上手に使うことで非常にいい対策ツールになります。今回の記事を参考に効果的な使い方を意識してみてください。