塾講師として中学受験生のサポートをしていると、難関校に手が届く子とそうでない子には違いがあることがわかります。スキマ時間の使い方もその一つ。難関校に合格していく子はスキマ時間の使い方がとても上手です。彼らは突然できた短い時間をどのように使っているのでしょうか。
中学受験で大きな成果を挙げるためにはまとまった時間が必要
難関校に合格していく受験生のスキマ時間の使い方の前に、前提となる大切なことを確認しておきたいと思います。当然のことではありますが、大きな成果を挙げるためにはある程度まとまった時間が必要です。
仮に1時間という時間について考えてみましょう。1時間を捻出する方法はいろいろとありますが、ここでは「1時間を1回作るパターン」と「10分を6回作るパターン」の2種類で比較します。
1回の1時間でできる勉強量はどれぐらいになるでしょうか。過去問であれば1教科分を解ける時間ですし、国語であれば長文の読解問題を2題解き復習までできるかもしれません。1時間というのは短いようで長いものです。集中して取り組めば、かなりの成果を挙げることができます。
一方、10分を6回用意したとき、これと同じ勉強量をこなすことができるでしょうか。残念ながら、そう単純ではありませんね。入試は1教科50~60分で実施されるものなので、「過去問を10分ずつ6回に分けてやってみよう」というわけにはいきません。
時間を細切れにすることで、前回なにをやったかの確認が必要になりますから、国語の長文読解を10分ずつ6回に分けて解くというのも現実的ではありません。大切な勉強時間が「あれ、前回どこまでよんだのだったかな? どんなお話だったかな?」という確認作業に奪われてしまうわけです。これでは、あまりにも非効率ですよね。
時間というのは、まとめて用意することで効率よく使うことができます。これを続けることで、やがて大きな成果へとつながっていくのです。
もう一つ、時間をまとめて用意すべき中学受験ならではの理由があります。それは子どもの集中力育成です。先ほども少しお伝えしたように、中学受験は1教科50~60分で実施されるものですから、受験生はそのあいだ集中し続けなければなりません。10~12歳の子どもにとって、この時間は非常に長いものです。この時間を集中する力は一朝一夕で身につくものではありません。だからこそ、長い時間をまとめて勉強に充てることで、受験生の集中力を高める必要があるのです。
ここまで説明したように、中学受験で大きな成果を挙げるためには、50~60分のまとまった時間をできるだけ多く用意することが大切です。しかし、どうしてもまとまった時間を用意できないこともあります。難関校に合格する子は、このスキマ時間の使い方が上手です。
難関校に合格する受験生はスキマ時間の使い方がうまい
中学受験塾の講師として生徒を観ていると、難関校に手が届く受験生とそうでない受験生のあいだには、スキマ時間の使い方に差があります。
たとえば、1日の授業が終わった後。中学受験塾は小学生が通う場所であるにもかかわらず、終了時間が21~22時になることがあります。安全面を考慮して受験生をお迎えにくるご家庭が多いものです。ところが、何らかの都合によって授業終了時刻までにご両親がお迎えに来られなくなる場合があります。つまり、受験生にとっては突然スキマ時間ができるのです。
難関校に手が届く受験生は、こんなとき勉強をしながら過ごします。その日に授業で教わった部分や苦手分野などを見直したり、いわゆる暗記分野の知識に忘れているものがないかをチェックしたりするのです。
一方、難関校に手が届かない受験生は、同じようにスキマ時間ができてしまったほかの受験生との談笑に時間を費やします。「こういう時間を有効に使おうよ!」と声をかけますが、本人たちはどこ吹く風。「いままで授業で勉強していたのに、また勉強するの?」とでもいうような顔をしています。
これはいわゆる「ガリ勉」になればいいということではありません。難関校に手が届く受験生は志望校に合格するにはまだまだ力が足りないということを知っているから、自然と少しの時間でも勉強しようと感じるのでしょう。
スキマ時間にはどんな勉強をするといいか?
塾の後にお迎えを待っている時間以外にも、思った以上にスキマ時間は発生します。昼食や夕食ができるのを待っている時間、塾に向かう駅のホームで電車を待っている時間、あるいは電車に乗っている時間……。トータルすれば1日1時間程度あるかもしれません。では、この時間にどのような勉強をすればいいでしょうか。
ポイントは、短時間で集中して取り組めるものであることです。たとえば、基礎的な計算練習や漢字練習、理科や社会の一問一答式の問題などがいいですね。入試が近づき過去問に取り組んでいる時期であれば、実践的な練習に応用することがます。たとえば、入試時間から計算問題にかけていい時間を割り出し、入試で出るのと同じ数の計算問題をその時間で解く練習をするのです。こういった練習を繰り返すことで、集中して取り組む力を育むことができます。
短時間集中する力を鍛えておくことは、入試本番で受験生助けてくれる可能性もあります。どんなに勉強を重ねた受験生でも入試当日は緊張するもの。何年分もの過去問を解くことで体に染み込んでいたはずの時間配分の感覚が狂ってしまい、時間が足りなくなってしまうこともあるのです。高い集中力を身につけている子は不要に焦ることなく、全力で問題を解くことができます。スキマ時間で集中して勉強できる受験生の本当の強みは、ここにあるのかもしれません。
まとめ
- 本来、中学受験で大きな成果を挙げるためには、まとまった時間が必要
- どうしてもできてしまうスキマ時間を有効に使わなければならない
- 短時間で集中してできる勉強をすることでスキマ時間を有効活用できる
- スキマ時間で勉強するなかで高い集中力を身につけておけば、入試本番で不測の事態が起きたときも焦ることなく問題を解くことができる
難関校に合格する受験生と手が届かない受験生のスキマ時間の使い方の違いを紹介しました。もちろん、両者をこの点だけで単純に比較できるわけではありません。ただし、塾講師として毎年多くの子どもたちを見てきた経験から、難関校に合格する子と手が届かない子にはスキマ時間の使い方に違う傾向があることは確かです。中学受験生を持つご両親の参考になれば嬉しく思います。