「中学受験に成功した(あるいは失敗した)」という言葉を聞くことはよくあります。もし聞いたことがなくても、中学受験をするかどうか検討するときには誰もが「成功すればいいけど、失敗したらどうしよう……」と考えるものです。
ここで考えたいことがあります。当たり前のように「成功」や「失敗」という言葉を使っていますが、どうなることを中学受験の「成功」あるいは「失敗」と言うのでしょうか。
中学受験で第一志望校に合格できるのはどれぐらい?
一般的なご両親は中学受験に「第一志望校の合格」を求めるものです。中学入試が中学校に入学する小学生を選抜するものである以上、これは当然のことだと言えます。では、第一志望校に合格できなければ、中学受験は失敗なのでしょうか。
「中学受験の成功=第一志望校の合格」という図式は非常にわかりやすいものです。ただ、これだけを成功だと考えるのはよくありません。
中学入試の倍率は一般的に3倍程度だといわれています。なかにはほぼ1倍の入試や5倍を超える入試もありますが、平均するとこれぐらいに収まるはずです。そうだとすると、1回しか入試を行わない学校の場合、約1/3の受験生しか第一志望校に合格できないということになります。つまり、「中学受験の成功=第一志望校の合格」という価値観のなかでは、約33%の受験生だけが成功して、約66%の受験生は失敗に終わってしまうということです。中学受験生本人にとってもご両親にとっても、これは辛いのではないでしょうか。
第二志望校や第三志望校の合格でも成功
中学受験をするのであれば誰でも第一志望校の合格を目指すでしょうし、そうするべきです。ただ、第一志望校に合格することだけを成功だと考えてはいけません。第一志望校には3人に1人しか入れないのだという現実を考慮して、第二志望校や第三志望校あるいはそれ以降の志望順位の中学校でも、合格したら成功だと考えることが大切です。
「第四志望校、第五志望校に合格したって……いいのか悪いのか……」と考えてしまう気持ちもよくわかりますが、それはあくまで親の都合です。中学受験の勉強は一般的に小学4~6年生までの3年間を費やして行うものです。そのあいだ、子どもたちは遊びたい気持ちや他の習い事に取り組みたい気持ちを我慢して受験勉強に励みます。その結果、「第一志望校に合格しなかったからこの受験は失敗」と一刀両断されてしまったのでは、中学受験以降のお子さんに悪影響が及んでしまう危険性があります。
中学受験の目的を見失わない
そもそも、なぜお子さんに中学受験をさせようと考えたのでしょうか。
「地元の公立中学は荒れていて通わせたくない」
「私立中学でしっかり勉強させたい」
「あの中学校の教育方針に感銘を受けた」
中学受験を決断した理由はさまざまあると思います。こうした理由は、すべて「子どもの将来をよりよいものにしたい」という気持ちが出発点です。「第一志望校合格」という目的も、こうした思いの延長にあるのではないでしょうか。
そうであれば、必ずしも第一志望の合格だけが中学受験の成功だとは言い切れないことがわかります。3年間の受験勉強をはじめたころと中学入試終了後では、どの受験生も例外なく成長をしているものです。学習面はもちろんのこと、人間的にも本当に大きくなっています。おそらく、自分の目標のために一所懸命努力した経験が子どもを強くするのでしょう。この経験と強さは、中学受験以降の人生で必ず役に立ちます。お子さんが思春期を迎えたころ、20代を迎えたころ、あるいは30代や40代になってから「ああ、中学受験をしてよかった」と思う日があるはずです。
中学受験の成功とは? 失敗とは?
中学受験の成功とは、決して第一志望校合格だけを指すのではありません。第二、第三志望校……あるいはそれ以降の志望順位の中学校に合格という結果でも、受験勉強期間に子どもが人間的に成長したのであれば、それは充分「中学受験の成功」と言えるのです。
こう考えると、中学受験の失敗についても定義できます。それは受験したのにもかかわらず、子どもが成長をしないこと。あるいは他人を見下したり、真っ直ぐさを失ってしまったりと、好ましくない人間性になってしまうことです。
実際にはこうしたことになる前に、ご両親や塾講師、家庭教師といった大人がその芽を摘むために動き出しますから、中学受験の失敗はほとんど起きないということになります。
まとめ
- 中学受験で第一志望校に合格できるのは、平均3人に1人。「第一志望校合格=中学受験の合格」と考えてはいけない
- 中学受験の目的は、お子さんの将来をよりよいものにするため。第二志望以降の志望順位の中学校に合格という結果でも、その過程でお子さんが成長したのであれば成功だと考えるべき。
- 約3年間の受験勉強期間に成長しない子どもはいない。ほとんどの場合、中学受験は成功ということになる。
誤解のないようにもう一度書き添えますが、筆者は第一志望校の合格を目指すべきではないと言いたいのではありません。それだけを成功だと定義するのは危険だと言いたいのです。第一志望校の合格は、お子さんが成長した先にある結果の一つに過ぎないのだと考えてください。