秋以降、入試まで5か月を切った中学受験生を対象に、各塾が学校別模試を実施します。大手・中堅塾が開催しているものとしては以下があります。
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学校別サピックスオープン(サピックス)
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学校別判定テスト(四谷大塚)
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学校別診断模試(グノーブル)
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学校別模試(ジーニアス)
これらはその名の通り、基本的に各中学校を志望する6年生のみが受験する模試です。受験生がこれらの模試を受けるメリットはなんでしょうか。また、万一思わしくない結果が出てしまったときは、どのように考えればいいのでしょうか。
学校別・志望校別模試を受験するメリット
学校別模試を受験するメリットは、主に以下の3点です。
志望校で模試を受けられる
筆者個人的にもっとも大きなメリットだと考えているのは、志望校で模試を受けられるケースが多いということです。この場合は、ぜひ志望校での受験を希望しましょう。
中学受験生は小学生です。普段はどんなに明るく、元気なお子さんでも、2月1日にはじめて志望校に入る状態では過度に緊張してしまいかねません。ただ一度でも経験したことのあることであれば、思ったより緊張しないものですよね。志望校別模試で一度でも志望校に入ったことがあれば、入試当日の過度な緊張を抑えられる可能性があります。
志望校別模試でなく、文化祭などのイベントでも志望校に入る機会はあります。ただし、やはりある程度の緊張感がある志望校別模試で実際の教室に入り、席に着くほうが“予行練習”や“リハーサル”になるのではないかと考えられます。
自分の立ち位置を認識できる
学校別模試は前述の通り、各中学校を志望する受験生のみが受けるものです。志望者のなかでの立ち位置を知られるのは大きなメリットと言えます。「自分は志望校の受験生のなかでどれぐらいの順位にいるのか、偏差値はどれぐらいか」ということを、把握できる機会は貴重です。
志望校別模試の結果を客観的な数字で突きつけられるのは、受験生によっては心理的な負担が大きなものかもしれません。しかし、結果がこわいからという理由で受験しないという選択はありませんので、ぜひ勇気を持って受験してみてください!
補強・克服すべき、志望校の苦手分野がわかる
学校別模試は各塾の先生方が各中学校の入試問題を分析し、その傾向に合わせて作られているものです。学校別模試で失点している問題を確認すれば、志望校合格のためになにをすればいいのかがわかってきます。
たとえば開成中学の国語であれば、「象徴」や「暗示」などが使われた箇所についてよく出題されます。駒場東邦の国語であれば、気持ちの変化を問うものが高確率で出題されますね。もしこれらを扱う問題で失点していることがわかったら、意識的に対策していくことができます。
このように志望校を受験するために補強が必要な分野がわかるのは、大きなメリットです。
学校別模試で結果が思わしくなかったときの受験生と家庭の心理状態
学校別・志望校別模試を受験することのデメリットは、結果が思わしくなかったときの精神的ダメージが大きいことです。
学校別模試は合格力判定サピックスオープンや四谷合不合テストとは、受験生本人やご家庭の意識がだいぶ異なります。志望校の名前が冠にされたテストですので、この結果が入試の行方を左右する意識があるのですね。この模試で思ったような結果が出なければ、落ち込んでしまうのも無理はありません。
落ち込むだけでなく、「このままでは、志望校合格はもう無理なのではないか」と考えてしまうことはよくあります。現実的な問題として、もし第一志望校が難しいのであれば、プランBの検討を早いうちにしておかなければならないという事情もあるでしょう。
私が以前一緒に学習した受験生の複数の保護者の方の話ですが、学校別模試の結果が思わしくなかったため、塾の先生に「志望校を変えたほうがいいいでしょうか」と相談したそうです。すると、ある保護者の方は「学校別模試の結果が悪いと入試もうまくいかないことが多いです」と言われてしまいました。
塾の先生としても、受験生本人やご家庭のことを考えれば現実的なお話しをしなければならないという意図もあって、このようなことを言ったのだと思います。ただ、言われた側である受験生とご家庭のショックは計り知れません。
学校別・志望校別模試の結果が思わしくなくても合格することはよくある
それでは学校別模試や志望校別模試でいい結果が出ないと、志望校に受験は断念しなければならないのでしょうか。
模試で出る合格可能性はあくまで確率の話ですから、「合格可能性80%」でも不合格になることはありますし、「合格可能性20%」でも合格することはあります。私もかつては塾で生徒さんたちと一緒に学習していましたから、「学校別模試の結果が悪いと入試もうまくいかないことが多い」と言った先生を責めることはできません。
ただ、先ほど紹介した、塾の先生から「学校別模試の結果が悪いと入試もうまくいかないことが多い」と言われてしまった生徒さんは、志望校を変更せず第一志望校に合格しました。私はこの生徒さんの隣で伴走していたわけですが、第一志望校をはじめとする受験スケジュールを変更する必要はないと判断して本当によかったと思っています。もし塾の先生のこの言葉だけを判断材料に志望校を変えていたら第一志望校の合格はなかったのだと思うと、いまもゾッとします。
必ずしも「学校別・志望校別模試の結果がよくなかった=志望校を変更しなければいけない」というわけではないということを覚えておきたいですね。
どのような場合、志望校・受験校の再考を検討すべき?
学校別模試・志望校別模試の結果が思わしくなかった場合でも、志望校を変更する必要がないと考えられるのはどのような場合でしょうか。
それは、志望校の過去問でしっかり得点できている場合です。私としては「合格者平均を超えているのであれば問題なし」「受験者平均や4科の合格者最低点をコンスタントに超えているのであれば合格の可能性は十分ある」と考えています。先ほど紹介した受験生も、志望校の過去問に取り組んだときには良好な結果が出ていました。
もちろん「過去問ができているから必ず合格する」というわけではありません。しかし、第一志望校の先生方が実際につくった過去問ができているのに、その学校の受験を回避する必要はないと考えています。
いっぽう、何回も過去問に取り組んでみていい結果が出ていないのであれば、入試結果もそれなりに覚悟すべきかなと思います。学校別・志望校別模試で思ったような結果が出ていない+過去問もうまくいっていない……という場合は、プランBも検討しておくのがいいのではないかと考えます。
お子さん本人が満足する入試に
中学受験生は小学生です。その小学生が友人と遊びたい気持ちやゲームをやりたい気持ちを抑えて3~4年間もの長いあいだ勉強するのが中学受験です。
模試のたびに算出される偏差値や過去問の結果という客観的なデータはもちろん大切ですが、お子さん自信が納得のいく受験にすることも同じぐらい大切だと思います。お子さんに熱望校がある場合はなおさらです。データだけを元に熱望校の受験を回避してしまった場合は不完全燃焼のまま受験を終えることになり、中学生以降の人生に悪影響を及ぼすことがないとは言い切れません。
可能な限り熱望校は受験する前提で、大人側(ご両親、家庭教師、塾講師)は万一の場合に備えてプランB、Cを用意。お子さんと時間をかけて話し合っておくといいですね。
まとめ
- 学校別・志望校別模試のメリットは「1、実際の志望校で受験できるケースが多いこと」「2、自分の立ち位置を認識できること」「3、補強・克服すべき、志望校の苦手分野がわかる」
- デメリットは「結果が思わしくなかったときの精神的なダメージが大きいこと」
- 学校別・志望校別模試の結果が思わしくなくても合格することはよくある。
- 志望校の過去問で結果が出ている場合、本当に志望校を変更する必要はないと考えられる。
- 「学校別・志望校別模試の結果が思わしくない+志望校の過去問でも結果が出ていない」のなら、志望校の変更を検討する必要がある。
- 受験生本人に熱望校があるのであれば、可能な限り受験させてあげたい。大人側(ご両親、家庭教師、塾講師など)はプランB、Cを用意して、お子さんと話し合っておく。
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